人材バンクなどいらない

公務員改革の一環としての人材バンク。安倍晋三総理の肝いりとあって渡辺喜美行革 担当大臣も張り切りすぎたのかどうか、自民党内でも改革案をめぐってぎくしゃくし ているようだ。各省庁による押しつけ的斡旋をさせない代わりに、人材バンクで一元 的に職を紹介するのだという。野党は、現在の2年という待機期間もなくなって、む しろ天下りを合法化する「天下りバンク」だと批判する。官僚の天下りを目の敵にす るような論調にはやや違和感を感じるものの、この人材バンクがなぜ改革なのかがよ くわからない。

もともと天下りのどこが問題なのか。高級官僚が特殊法人や民間会社を渡り歩いて、 法外な退職金を何回ももらうことなのだろうか。それとも密接な関連のある企業に天 下った元役人が古巣に顔を利かして仕事を持ってきたり、官製談合の片棒をかついだ りすることなのだろうか。それが問題かどうかを判断する基準は、退職した役人が稼 いだ金額がどれだけ税金と関係があるかだろう。税金の無駄遣いでない限りは、霞ヶ 関から引退した人がどこでいくら稼ごうとそれを非難するいわれはないのである。

たとえば役所の下請けのような仕事をしている団体(つまりは税金で食っているよう な団体)に天下ってごく短期の勤務で多額の退職金をせしめるようなケース。こういっ た団体の業務は民間企業に任せてもいいようなものも多いはずだし、場合によっては 必要のない業務もあるかもしれない。そういった団体で給料と退職金を得るのは税金 の無駄遣いである。それに民間会社に天下って、自分の古巣とのパイプになり、官製 談合の片棒をかついだりするケース。官製談合は要するに税金を仲間内でうまく分配 しようというシステムだから、これも税金の無駄遣いである。

そういったケースをなくすというのは分かるが、民間企業がどうしても欲しいという こともあるだろう。官僚を辞めた人の見識やネットワークが役に立つからだ。これ自 体は給料がいくら高かろうと、別に文句をつけるようなものではあるまい。もちろん 古巣への働きかけに役立つということもあるかもしれない。しかし官庁への働きかけ は民間企業を含め、どの団体もやっていることだ。情報を入手し、働きかけを有利に 運ぶために、辞めた高級官僚を入れるのは自然なことだと思う。そこで、贈賄やら収 賄、あるいは談合その他の違法行為があれば、それぞれの法律で取り締まればいい。

その働きが民間企業にとって算盤に合うかどうかは民間企業の問題である。そしてコー ポレートガバナンスの観点から言えば、働きに見合わない元高級官僚を雇い続けるこ とに説明がつかなければ解雇すればいいだけの話だと思う。問題は役所のほうが一度 人を入れた民間企業のポストを自分たちの利権と考えようとすることだ(こうなると 企業はクビにしたくてもできなくなる)。これを防ぐには、企業は人の斡旋を役所の 秘書課に頼まないことだ。要するに民間企業が官僚を一本釣りすればいいことなので ある。それをせずに持ちつ持たれつの関係になるのは、民間企業の側も怠慢だからで ある。良いか悪いかは別にして、海外ファンドなどが「もの言う株主」になって妙な 人事にどんどん注文をつけるようになれば、やがては役所からのもらい下げ人事も消 えていくだろう。

こうして見ると、いちばんの問題は役所周辺に群がっている(というよりももともと 退職者の面倒を見る目的でつくった)団体などへの天下りがいちばん問題なのだ。要 するにそれは事実上、税金で給与や退職金を払っているのと同じことだし、当然のこ とながら現役のころの忙しさに比べたら仕事などないに等しい。それに税金が使われ ているにもかかわらず、監視の目が行き届かない。こうした団体を改革の対象から外 そうとする官僚側の意図はよく理解できる。まさに自分たちがいちばんコントロール しやすいところであるからだ。そうなると本来、人材バンクの対象にするかどうかよ りも、こうした団体を減らすことのほうがよほど有意義だ。役に立っていない、民間 でもできる仕事をする団体は幕引きするのが正解である(ちなみに退職した高級官僚 のうち、こうした団体のお世話になるのは約40%だそうだ)。

官僚が民間へ転身することは別に悪いことではない。高級官僚が民間企業から三顧の 礼で迎えられようと、中堅官僚が民間企業からスカウトされようと問題はあるまい。 人材バンクなど置かずとも、各省庁の秘書課が斡旋するのを止めればいい。民間のヘッ ドハンターたちが喜んで人材探しに入ってくるだろう。役所の秘書課がヤミで斡旋し ていたら、斡旋した秘書課長と斡旋された人間の双方から当該の人の年収分に匹敵す るような罰金を徴収するのである。2人斡旋していたらもちろん2人の年収の合計分で ある。そうなると役所の秘書課長に誰もなりたがらなくなるかもしれないが、民間企 業との関係は相当大きく変わってくるのではないだろうか。

(Copyrights 2007 Masayoshi Fujita 無断転訳載を禁じます)

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