安倍か福田か

ポスト小泉の鍔迫り合いが激しくなっている。世論調査などによれば、安倍晋三現官 房長官か福田康夫元官房長官が有力というのが大方の見方である。もともとは安倍氏 の人気が圧倒的に高かったが、福田氏が急追している形だ。

二人とも森派であるということもあって、候補者を一本化しようという動きもあった が、結局、森前首相も調整を断念せざるをえなかった。それは二つの意味で当然だと 思う。一つは、総裁候補を決定する派閥というシステムが弱くなっていること。もう 一つは、福田氏の年齢だ。今年で70歳、このチャンスが逃せば首相になる可能性はぐっ と低くなる。だから福田氏は絶対に自分から降りることはないだろうと思う。

もちろん安倍氏を降ろすこともできない。一般有権者の人気が高い安倍氏が今年9月 の自民党総裁選挙に出ないとなったら、自民党そのものの支持率にまで影響が及びか ねない。自民党の古い体質が顔を出して、若い安倍氏の立候補を阻んだと見られてし まうからだ。

しかしポスト小泉に誰が総裁になろうと、選挙では負ける(すなわち議席を減らす) ことになるだろう。何と言っても昨年9月の総選挙で自民党は、自党だけで300議席近 い数を獲得し、公明党と合わせると327、衆議院(定数480)の3分の2を越えるという 地滑り的勝利を収めたからである。これだけ勝つと次回の選挙では野党に勝たせたい という心理が働くものだ。あの選挙で小泉自民党支持に動いた人々も、今度は小沢民 主党支持に動くだろう。民主党が辛くも勝った千葉の補選でも、メール問題の処理で 手間取らなければ、民主党楽勝のケースだったと思う。

2007年参議院選挙は、2001年にやはり自民党が圧勝したときの議員の改選だ(2004年 は民主党が自民党よりも議席を多く獲得し、政権交代と民主党がはしゃいだ年である) 。したがって自民党の新党首にとっては、もともとハードルの高い選挙であり、また 下手をすると参議院での与党過半数を失う可能性のある選挙でもある。そしてもし与 党で過半数を割れば、新しい自民党総裁が責任を問われることにもなりかねない。た とえ参院選を乗り切ったとしても、次の総選挙(遅くとも2009年)は必ず議席を減ら すだろう。つまり次の自民党総裁は損な役回りなのだ。

その意味で、自民党内の論理から言えば、安倍氏温存という考え方も成り立つ。だか ら福田氏の支持率が急激に上昇しているとも解釈できるのだが、福田氏が首相として ふさわしいかどうかについては大いに疑問を感じる。官房長官だったころも同じこと を思ったが、福田氏は国民に対して説明するという現代の政治家にとって最も肝心な 意欲が欠けているように見えるからだ。

先の訪米のときも、同行記者団に対してほとんど説明らしきものをしなかったとして 記者たちの間からは不満が漏れたと聞く。「一介の議員」となった福田氏がアメリカ 政府の要人たちと会見するという「実力」を見せつけるための訪米であったはずなの に、どんなことを話し合ったのか、何にも説明しないというのはおよそ大人の政治家 ではない。もちろん現政権の外交の手足を縛ることはしたくないということも理解で きるが、それならそれで説明のしようがあろうというものだ。

小泉首相はが、国民への説明に熱心だったかといえばそうも言えないだろうと思うが、 少なくとも自分の言葉で語ろうとした(たとえワンフレーズでも)ことは紛れもない 事実。そのスタイルがそれまでの首相とは大きく異なっていたことも事実である。そ こに多くの国民は新鮮さを感じた。

そういう観点からすると福田氏のスタイルは、昔のスタイルへの回帰と映る。自民党 の長老たちにとっては、異端児であった小泉首相よりははるかに安心できるタイプに は違いない。小泉首相のように改革を叫ぶわけでもなく、古い自民党をぶっ壊すなど と乱暴なことは言わない。だからといって、党内論理で福田氏を後継総裁にするよう なことがあれば、自民党はたちまち支持を失うだろう。安倍氏だったらすべてうまく 行くわけでもないだろうが、安福のいずれを取るか、自民党にとって大きな岐路であ ることは間違いない。

(Copyrights 2006 Masayoshi Fujita 無断転訳載を禁じます)

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