2006年は大丈夫だが

株価は将来を見通すという。実際、2006年の日本経済は順調であると言っていい。デ フレからも完全に脱却できるだろうし、賃金も上がるだろうし、消費も伸びて景気を 押し上げるだろう(耐震偽装問題で揺れるマンションの売れ行きはやや心配だが)。 ただ問題は、株価が見通す将来とはどれぐらい先の話なのかということである。

長い目で見れば、日本経済は大きな弱点を抱えている。人口が減るということだ。厚 生労働省の推計によれば、今年2005年から日本の人口が減り始めたようだという。人 口統計が始まった明治以来、第二次世界大戦の一時期を除いて、人口が減るのは日本 にとって初めてのことである。

人口が減る社会が果たして豊かな社会として存立しうるのか。この問いに答えるのは むずかしい。絶対に存立し得ないと言い切ることはできないからである。少なくとも 人口が多いか少ないかは、豊かかどうかと関係がない。しかし人口が増えるか減るか は、経済が上に向かうのか下に向かうのかと相関関係があるように思える。

少なくとも人類の歴史において人口が減少している社会あるいは国が豊かな経済成長 を遂げた例はない。社会が発展するのは、モノやサービスを生産し、それを消費する 人々がいるからだ。そして発展すればまたチャンスを求めて人が流入する。ところが、 人口が減るということは消費する人々が減ることであり、誤解を恐れずに言えば、発 展のエネルギーを失うということである。

人口が減っても豊かな人々が消費を増やせばいいというほど簡単ではない。日用品を 考えてみればいい。トイレットペーパーの消費量は、4人家族と2人家族では大きく 異なる。人が半分になって残りの人が消費量を2倍にはできないのである。付加価値 の高い、つまり価格が2倍のトイレットペーパーを買えば、メーカーは助かるかもし れないが、これもそうはいかない。つまり、豊かな一部の人々ががんばっても、全体 の人数が減ってくるものは補いきれない。

全体の消費量が減ればエネルギー消費量が減り、結果的に温暖化ガスの排出も減ると いうような「メリット」はもちろんある。ただそれは健全な形ではあるまい。経済発 展の中で技術の発展によって公害が減り、温暖化ガスの排出がへるのが健全なのであ る。そして社会が豊かにならなければ、そういった技術は進歩しない。また、電車が 空くだろうとか、里帰りが楽になるとかいう人もいる。しかしそれは馬鹿げた議論だ と思う。たとえば飛行機が空くようになったら、航空会社は減便するだけの話。電車 ががらがらになってきたら、鉄道会社は運行本数を間引くようになるだろう。利用者 がいないのに飛行機やバスを運行する会社はあるまい。

今までも地方では人口が減り続けてきたところがある。そしてそれらの地方は経済力 で見れば明らかに衰退してき。豊かな人々がその地方で大金を消費して地方経済が豊 かになったなどという話は聞いたことがない。そしてそれらの地方は、中央から税金 の交付を受けてきた。国という単位で所得の再配分を行ってきたのである。しかし国 全体の人口が減り始めたら、どこの国が自分たちの所得を分けてくれるというのか。

人口が減ることは30年前からわかっていたのに、この30年間有効な手を打つことがで きなかったと竹中総務相は語った。その理由は明らかである。要するに、危機感がな かったのだ。実際、「人口が減っても悪いことばかりではないだろう」と言う人は少 なくない。しかし、人口が減るということは老齢化するということなのだから、若い 人が老人を支える構造になっている現在の社会が破綻することは目に見えている。年 金と健康保険は、人口が減り続ければもたない制度である。そのときにどのような社 会不安が起きるのか考えてみたら、そうのんびりしておられないはずだと思う。

そして問題なのは、人口減を日本人だけで何とかしようと思ったら、おそろしく時間 がかかるということである。今、生まれた子供が働く年齢に達するまでには20年はか かる。それまでに社会保障制度を保っていられるかどうか保証の限りではない。上昇 を続ける株価とは裏腹に、われわれの未来はそれほど明るいものではないのかもしれ ない。

(Copyrights 2005 Masayoshi Fujita 無断転訳載を禁じます)

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