自民党は改革政党か?

郵政民営化法案の「仕切り直し」審議が始まった。自民党は今回の総選挙で目玉になっ た新人議員を民主党案への質問にぶつけ、華々しくデビューさせた。テレビ中継を意 識した演出なのだろうが、肝心の中身はどうもピンとこなかった。原稿を読み上げて いるだけという印象が強くて、執行部の振り付けどおりに踊っている感じがしたから である。

それはともかく、改革の本丸と位置づけた郵政民営化にめどが立ったせいか、小泉自 民党は、矢継ぎ早にいろいろと「改革」を打ち出してくる。政府系金融機関の統合、 医療費抑制、道路特定財源の改革、などなど。こんなに与党が改革を掲げるのは、普 通の政治の筋書きにはない。

財政赤字にしても、OECD30カ国中最悪とも言える状態にしたのは自民党政権なのであ る。すなわち自民党の政策がバブルを生み出し、そこで踊った企業は塗炭の苦しみを 味わった。国際相場の8倍とも言われるお米を食べざるをえないのも、狂牛病を発生 させたのも、自民党の農政のせいなのである。戦後のほとんどを通じて政権与党だっ たのだから、それらの責任を負うのが当然だ。

ところが小泉政権が4年前に登場してすっかり与野党の台詞が入れ替わってしまった。 だいたい選出された総裁が「自民党をぶっ壊す」などと叫ぶこと自体が異常なのであ る。しかも自民党の集票マシンである特定郵便局長会を敵に回すことが確実な郵政民 営化を打ち出すことなど、およそ政界の常識では計れない。その異常さも4年も続く と何となく慣れてきて、自民党がいつの間にか改革政党になってしまった。これが今 年の総選挙の結果につながったのである。

しかし自民党の新人議員も考えてみたほうがいい。どこの世界に、自分たちの利権の 版図を縮めてもなおかつ改革を目指す政党があるだろうか。うまく行かなくなってき たら変えざるをえないのだけれども、それは野党の役割だ。自民党は与党と野党が同 居している政党とよく言われてきた(実際、前回は「造反議員」が出たおかげで郵政 民営化法案は否決され、衆議院が解散された)。しかし今は、与党内の反対派が改革 を叫んでいるのではない。主流派が改革派ということになっている。

問題はここからである。与党が改革派になってしまうと、本来の役割を奪われた野党 が相対的に守旧派に見えてしまうことだ。今回の民主党がまさにそれである。この流 れを元に戻すのは容易ではない。しかしできないわけではない。なぜなら、自民党が いつまでも改革政党でいることはできないからである。これは政治の本質論である。 企業の経営者でも改革を標榜する経営者が何十年も経営を担当することはできない。 最初はよくても、やがては自己否定につながるのだから当然である。同じように改革 与党はやがて自己否定につながる。小泉首相が来年の自民党総裁任期切れとともに、 首相を辞めると言っているのは、ある意味でそこを見越した話かもしれない。

その論理をもう少し推し進めると、今は「改革」を旗印にしている自民党は、やがて また分裂するのだろうと思う。官僚が抵抗しようが、族議員が抵抗しようが、「死ん でもいいから、やる」と叫ぶリーダーなど、そうそう出てくるものではない。そうす ると「改革」を旗印にしないと当選できない新人議員たちと、もともと便宜上改革派 だった古参議員では利害が一致しないからである。そこで改革派を受け入れることが できるかどうかで、民主党が政権党になれるかどうかが決まるのではないだろうか。

民主党がどこまで改革路線を走ることができるかどうかが、政権を取れるかどうかを 決める。しかしこの改革は必ずと言っていいほど、国民の痛みを伴うものだ。増税も 必要だろうし、医療費の抑制も必要だろう。自信をもって国民を説得できるかどうか、 それが民主党のにとっての課題である。

(Copyrights 2005 Masayoshi Fujita 無断転訳載を禁じます)

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