続々・9・11選挙の意味

女性向けサイトのイー・ウーマンで、「小泉首相が勝ったら、日本の政治はよくなる と思いますか」という質問でサーベイを行った。結果は、4割弱の人がよくなると答 え、6割強がよくならないと答えた。このサーベイをやってみて驚いたことが二つあ る。ひとつはこの週に設定された6つのテーマの中で、このテーマが1位を占めたこ と。もうひとつは、書き込みをしてきたほとんどの人が、小泉改革について一定の評 価をしていたことである。

小泉内閣が成立する前にこんな質問をしたらどんな結果が出ただろうか。日本の政治 はよくないと思いつつも、何を言ってもどうせ変わらないという気持ちが前面に出て きたのではないかと思う。だいたい日本の政治をテーマにしたときに雑誌が売れた試 しがない。それが僕のニューズウィーク日本版における「苦い教訓」である。そうい う意味で今回は雰囲気がまったく違う。

小泉首相のワン・フレーズ・ポリティックスには何かと批判が強い。説明責任を果た していないのではないかというのである。確かに靖国参拝に関して質問されると一貫 して「適切に判断します」としか答えなかった。「適切に判断」とはどのような意味 なのかが問題であるときに、まさに木で鼻をくくったような答え方であり、これは一 国の宰相としては取るべき態度ではない。中国や韓国を刺激せずに、一方で靖国参拝 推進派をも刺激しないようにするずるいというか小賢しい答弁である。

そのあたりは小泉首相の外交的センスの限界なのかもしれないが、それでも有権者を 政治にこれだけ引きつけた「功績」は評価されていい。それが劇場政治であれワン・ フレーズ・ポリティックスであれ、とにかくかつてないほど多くの国民が絶対に選挙 に行くと答えているのである。これがもし憲法9条に関わるような大事件があるとき なら不思議はないかもしれないが、郵政民営化とか年金改革とか比較的地味な争点で あるだけに、小泉首相が雰囲気を盛り上げた結果と解釈するのが妥当だろう。

これほど政治への関心が高まったのはいわゆる細川新党が政権を取ったとき以来だろ うか。この新党が尻すぼみで終わったとき、有権者の間にはやっぱり日本の政治は変 わらないという諦観が漂ったものである。今回の特徴は、盛り上げたのが与党の総裁 だということだ。与党の総裁が好んで自分の党を割るなどということは普通は考えら れない。それは政権を失うリスクがあまりにも大きいからである。それを小泉さんは 敢えてやった。そこに国民は小泉首相の思いきりのよさを見たと思う。

ここで小泉さんの思い切りのよさというか、政局に関する独特の勘を読み誤ったのが、 民主党と自民党の郵政民営化反対派だ。政権を失うリスクを賭けてまで、衆議院を解 散することはしないだろうという気持ちがどこかにあった。それが政治の常識でもあっ たろうが、そこにとらわれたのは油断である。

おかげで民主党は明らかに出遅れた。自民党内の造反派は、本当に刺客をぶつけられ ることが決まってきたため、急いで新党結成に走ったものの、粗製濫造で二つもでき てしまった。もちろん綱領やらマニフェストなどには見るべきものはなにもない。泡 沫候補ならぬ泡沫政党である。

政策が問われる選挙は、戦後初めてとされている。ということは、これまでのような 漠然とした右翼・左翼が問われているのではないということ。すなわち有権者が政党 ではなく「政策を選択」するということだ。もっと言えば、この選挙で小泉自民党が 勝って、そして郵政民営化が実現して、結果的にそれが「改悪」であったとしても、 その責任は有権者が負うということである。

もしそうなったとしても、後世の歴史家が振り返ったとき、21世紀初頭のあの9.11選 挙は日本の政治が変わる画期的な選挙だった評価してくれることを期待したいと思う。 とにかく現状を放置したままではどうにもならない。それははっきりしている。

この記事は私の週刊メルマガ"Observer"に掲載したものです。

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