続・9・11選挙の意味

この選挙は、郵政改革であれ何であれ、とにかく日本の改革をめざす選挙である。こ れにはほとんどの人が賛成してくれるだろうと思う。どの政党が改革してくれるのか。 事実上は二つに絞られる。自民党と民主党である。自民党は本来「改革政党」ではな いが、今回は郵政民営化で党内守旧派を切ったおかげで「(郵政)改革政党」になっ た。少なくともそう見えるようになった。そして民主党は、本来、自民党よりははる かに「改革派」であるはずなのだが、郵政民営化の対案を出さなかったために、すっ かり影が薄くなってしまった。しかし年金や少子化ではそれなりに頑張ってはいる。


さてここで問われるのはわれわれ有権者である。いったいわれわれ自身はどんな日本 になってほしいと思っているのだろうか。税金が安くて社会のセーフティネットが充 実している国、などという共産党的幻想にもう惑いはしない。そんなことは不可能で あることはほとんどの人が承知している。「庶民の税金を安くして大企業から税金を 取れ」などと言うのは、およそ経済を知らない政治家の言うことだ。年金問題でも、 社会保険庁を解体すれば、高福祉低負担の国ができるわけではない。せいぜい年金の 破綻をいくらか遅らせるぐらいの効果しかあるまい。

もともと年金は無理のある制度なのだ。現役世代で退役世代に年金を支払うという制 度なのだから、人口構成が変われば成り立たなくなるのは目に見えている。団塊の世 代が支えているうちはよくても、団塊の世代が支えられるようになったら、とても支 え切れまい。その分、支給開始を遅らせるか、給付金額を抑えるかしか手がないだろ う。財政状況のいい年金と統合するという年金一元化をやっても、結局はどこかで成 り立たなくなる。そうすると一元化の先にあるのは財源をどこに求めるかということ だ。それで民主党は消費税率を引き上げるという提案をした。自民党は小泉政権のう ちはやらないとしている。

結局のところ、税金という形で負担をしても、年金制度を維持するかどうかというこ とに帰着するのだろうと思う。だとすればいっそ年金制度そのものを税金で支える仕 組みに変えれば、不払いの問題はかなり小さくなるはずだ。すくなくとも4割の人が 払わないというような状況はなくなる。ただ私たちはそこまでしてでも年金制度を維 持すべきだと考えているのか。それこそ、いつの日か選挙で争われるべき争点の一つ だと思う。

年金問題と少子高齢化とはセットの問題だが、その手っ取り早い解決策として、外国 からの移民の受け入れが考えられる。どの国でも移民の受け入れは、国内の職の機会 が奪われるとして慎重だ。かつてかなり熱心にやったヨーロッパに国々では、景気が 悪くなったときには必ず右翼から移民たちが攻撃されるようになっている。反対する のは右翼だけではない。外国人労働者を入れれば、職場を奪われるだけでなく、賃金 水準も下がる(それは諸外国の例を見れば明らかである)から労組も反対である。そ の上、彼らの住むところでは必ずといっていいほど「文化摩擦」が起きるとされ、一 般市民も賛成はしない。だから今のところどの政党も移民受け入れを主張することは ない。

しかし将来の年金問題である少子高齢化を解決するのに、子育て支援というようなこ とで本当に追いつくのだろうか。働く女性が子供を産みやすい状況にないことが出生 率低下の大きな理由であることは間違いない。しかしそこには「産めない」状況と 「産まない」選択の両方があることも事実である。つまり企業に補助金を出して「産 める」状況をつくることはある程度可能でも、「産まない」選択を変えることはむず かしい。生活水準が上がっているために、ダブルインカムでないと支えきれないとい う面もあるだろう。それに子供を産んで職場に戻ったときに依然と同じ仕事をやらせ てもらえるかどうかという不安を語る女性もいる。このような状況は、法律で規制し たり、あるいは補助金を出して解決できる問題ではないのだろうと思う。

だからこそ「移民」という選択肢を検討する必要があると思うのだが、それもとどの つまりは、私たちはそこまでして現在の生活水準を守りたいと思っているのですかと いう問題にぶつかる。郵政改革は取り掛かりにしかすぎない。日本を変える試みは始 まったばかりだ。そして私たちがどこまで変えたいと思っているのか、そこをはっき りさせないと、政治家も困ると思う。そして多くの場合、よほど生活に困窮している のでなければ、一般国民はかなり保守的である。それは歴史の教えるところだ。

この記事は私の週刊メルマガ"Observer"に掲載したものです。

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