自民党破壊のすすめ

郵政改革の関連法案が参議院で審議されている。参議院は与野党の勢力が拮抗してい るとあって、小泉純一郎首相は、「郵政改革法案がもし否決されたら、それは内閣に 対する不信任と受け止め、衆議院を解散する」とし、しきりに牽制球を投げる。いま 自民党内ではこの総理の「決意」を受けて、「このままでは自民党が壊れる」という 危機感が強まっているようだ。そして、郵政法案に反対を表明している参議院議員へ の締め付けが始まった。

僕自身は、郵政改革には賛成だ。なぜなら郵貯と簡保という巨大資金が、日本の金融 の構造をゆがめていると考えるからである。それに反対派の人々は、ユニバーサルサー ビスの維持としきりに言うけれども、競争のない時代の郵便局がいかにサービスの悪 い官庁であったか、よもや忘れてはいまい。郵便小包は制限があれこれついていて、 ひものかけ方が悪いと窓口で怒られて、泣く泣く列の後ろまでいって結びなおしたこ ともある。それが変わってきたのは、やはり先頃亡くなったヤマト運輸の小倉昌男さ んが、宅急便を始めたからだ。競争にさらされて、親方日の丸も変わらざるをえなかっ たのである。現状を維持するという発想に進歩はない。

多くの国民が反対しているわけでもなく、自民党をぶっ壊してでも郵政反対を貫くと いうほど腰の据わった自民党参議院議員は最終的にはそうはいないはずだから、きっ と郵政改革法案は参議院を通過するのだろうと思う。でもここは是非、造反議員に筋 を通してもらいたいと思う。そして言葉通りに小泉さんには内閣総理大臣の解散権を 行使してもらいたい。それで自民党がぶっ壊れるなら、そのほうがいい。郵政改革法 案が通るのと、自民党がぶっ壊れるのとどちらが日本の将来のためにいいかと言え ば、それは自民党がぶっ壊れるほうがいいに決まっていると思うからである。

日本の戦後政治は、自民党と社会党の55年体制が長く続いてきた。この政権交代を前 提としない体制は、まさに見せかけの民主主義だったわけだが、その間に自民党はず いぶんとずる賢くなった。つまり、党内に右から左まで抱えて、まるで鵺(ぬえ)の ような政党になったのである。おかげで自民党と対抗しようという政党は、なかなか 争点が見いだせなくなっている。もちろん郵政改革問題で民主党は反対しているが、 それでは民主党は今のままの郵政公社がいいと思っているのかというとそうでもない らしい。結局は対案が出てこないので民主党が何を望んでいるのかが国民に見えない。 それは岡田執行部のやり方がまずいというより、民主党の寄り合い所帯のなせるわざ だと思う。

ただその前に、自民党の鵺的体質が、党内野党によるガス抜きをしてしまうという側 面があると考えている。もちろん世界的に見ても、社会民主主義は今はやや苦しい局 面にある。何と言っても先進国は軒並み財政が苦しくなっているからであり、社会民 主主義が要求するような手厚い福祉など望むべくもないからだ。社会保障や福祉の政 策で差別化ができないと、リベラル派はとたんに苦しくなってしまう。

そういった状況を打破するには、もちろん民主党が第一党になればいい話ではあるが、 これはそう簡単ではない。政権党になれるほどの候補者を立てることも容易ではない し、それを当選させるのはまた至難のわざでもある。もう一つの選択肢は「自民党の 分裂」だ。それこそ保守的保守主義者とリベラル的リベラル派ぐらいは、はっきりと 分かれたらよかろう(ちなみに民主党にも同じことが言えるのだが、それについては ここでは触れない)。

自民党が割れて、民主党もついでに割れて、もう少しイデオロギー的にはっきりと区 別のつく政党になれば、有権者もわかりやすいのではないかと思う。小泉首相の言う ように、総選挙になれば政治は大混乱に陥るかもしれない。景気が踊り場から脱出で きるかどうかというところだけに、政治の混乱は日本経済に大きな打撃を与える可能 性もないとはいえない。それでも、ここは国家100年の計を考慮し、自民党参議院議 員の反対派の方々は、しっかりと同士的結束を固めて反対を通してもらえればと思う。 その結果、解散総選挙で小泉さんが勝ったら、それでようやく小泉さんが首相になっ たときに言った「自民党をぶっ壊す」という公約が実現する。それこそ「改革の本 丸」ではないのですか、小泉さん?

この記事は私の週刊メルマガ"Observer"に掲載したものです。

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■郵政法案否決・衆院解散(その1)小泉純一郎というリーダー

「久しぶりにスカっとした」、というのが、今回の解散劇に対する僕の率直な感想である [続きを読む]

コメント

 本コラムのご意見にほぼ全面的に賛成致します。
 ところで、今回しきりと「解散」を凄んでいる小泉首相ですが解散権を行使するとすれば初めてではないでしょうか? 議員にとって建前論はともかく本音は与野党を通じて解散反対ではと推測します。
 「解散=失業」であり、次に当選する保証は何もないのですから・・・。逆に言えば、「解散(選挙)」を怖れない、長年「野党」になる覚悟があれば、かなりの政治活動ができるのではないか? と思います。しかし、国会をみればジュニア議員のオンパレード!? とてもそんな雰囲気はかんじられません。無論、これは政界だけのお話しではないのですが・・・。

藤田さん、こんにちは!無事にミュンヘンに戻りました。

ドイツは議会解散、9月18日総選挙と相成りました。現在の政党支持率を見れば、野党第一党キリスト教民主同盟(CDU)が勝利し、政権交代が実現するのはほぼ間違いないでしょう。シュレーダー首相は自らの与党社会民主党(SPD)の負けをほぼ承知で解散総選挙へと導いたことになる訳ですが、これには裏があると見た方がいいでしょう。

焦点の1つである、年金・医療給付などの広範なカットを盛り込んだ社会保障改革は、元々どの党がやっても不人気な政策。政策的オプションも限られ、与野党間の違いが出にくい。ならば、ここは一つCDUにやらせてみて「やっぱりダメだった」という事実を作った上で、4年後に再びSPDが政権奪取できるよう道筋を作ったのではないかーと勘ぐりたくもなる。もっとも、改革に伴うマイナスの影響を相殺して余りあるぐらい劇的に景気が回復でもすれば、シュレーダーの夢はあっさり幻になるけれども、その可能性は極めて低いでしょう。という訳で、私個人としては結果がほぼ分かり切った9月の総選挙よりも、4年後の次回総選挙のほうに早くも関心が移っています。

ところで、日本でも9.18総選挙(実現すれば日独ダブル解散総選挙ですね)説がくすぶっているようですが、このままでは政権交代もままならないので、はっきり言って税金の無駄ですね。何故、安易な解散を戒める論調が出ないのか不思議です。もっとも、解散総選挙のお祭りにあやかりたいのはマスコミとて同じなので、期待するほうがバカらしいのかもしれません。では。

 

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